株式会社デコ屋敷大黒屋

郡山市西田町にて約300年の伝統を誇る張子づくりを現代に伝えるデコ屋敷大黒屋 第21代当主 橋本彰一さんにお話を伺いました。

──事業内容・強みについて

当社は張子人形を中心に様々な商品を製作していますがいずれも手作りです。手作りなので大量生産はできませんが、同じ型を使いながらも一つとして全く同じものがない所が手作りの良さです。リクエストを頂ければ1点からの小ロットでもお作りできます。
また、2021年の4月には隣接の作業場を改修した古民家カフェ140 Decorico(デコリコ)をオープンしました。

──連携事例について

一つ目は2014年に郡山市で開催されたB-1グランプリをきっかけに結成された「郡山クリームボックス楽団」さんとコラボした張子で作った「郡山デコクリームBOX」です。クリームボックスは厚切りで手のひらサイズのパンに、白いミルク風味のクリームをたっぷり塗った郡山市発祥のご当地グルメです。郡山市のソウルフードとして愛されていますが、このクリームボックスを入れる張子で作ったBOXということで、数量限定で製作しました。ユニークな仕組みから当時大変好評をいただいたのですが、それ以降はあまり日の目を見ない状況でした。しかし最近になってある企業さんからこのBOXを活用したいとのお声がけを頂いて、現在商品化に向けて活動中です。
二つ目は昨年2023年に愛称を募集したことで話題になった「ねこ形土器」(愛称:じょもにゃん)にちなみ、張子で制作した「ねこ形ストラップとブローチ」です。この土器は23年前にここ西田町の鬼生田地区の遺跡から発掘されたもので、実は当社では以前から猫が十二支にいないことをテーマとした「うっかりねこ」というキャラクターで張子を製作しており運命的なものを感じてしまいました。
残念ながら「じょもにゃん」という愛称は権利などの都合で使用できなかったため、オリジナルキャラクター名として「にゃん頭(にゃんず)」という名称を付けて近日販売開始予定です。なお、売上の一部を文化財保護を目的として郡山市に寄付する予定です。

──連携の契機について

当社は今まで様々な企業や団体とコラボしてきましたが、そのきっかけとなったのは元サッカー日本代表の中田英寿さんが2009年よりスタートしたプロジェクト「REVALUE NIPPON PROJECT」に参加させていただいたことです。
日本の物作りや伝統工芸を活性化させることを目的とし、毎回テーマを決め、テーマとなったジャンルの工芸家が、著名なアーティストやデザイナーとコラボして作品を作るプロジェクトなのですが2011年のテーマが「和紙」だったこともあり参加が決まりました。この時は全長2.4メートルのシロクマを製作しその毛並みを和紙で表現するというとても難しいものでしたが、このチャレンジをきっかけにどんなことにも挑戦してみようと思うようになりましたね。

──連携により得られたメリットについて

普段黙々と作品作りをしているとどうしても固定概念が強くなってしまうのですが、異業種の方と交流することで私自身には無い視点で画期的なアドバイスを頂けることも多く、そこから商品のアイデアになることもあります。
そういう意味でお声がけや相談を頂いた際にはとにかく断らない・とにかくやってみることを心がけています。

──今後の展開について

「伝統を守る」ことも大切ですが私自身は「伝統を作る」ことが大切だと考えています。張子製作の伝統的な技法では最初に木型を製作しそれをベースとして和紙で型を取っていくのですが、最近は粘土で造形したものを3Dプリンターで出力するなどの方法も取り入れています。現在当社では木型を彫れる職人が私だけとなっているため、今後を考えるとこういった現在の技術と伝統を融合させることも大切だと考えています。
実は今、作品制作の傍ら矢吹町の光南高校へ美術教師として週2回勤務しています。担当はCGと映像表現という張子製作とは全く異なる分野ですが、若い生徒たちと交流することで感性も磨かれる気がしています。
また、最近では首都圏で開催されている商談会などにも積極的に参加するようになりました。直近では2024年2月に東京恵比寿で開催された合同展示会「大日本市~日本のものづくりと繋がる場所」に出展しました。この展示会では張子の中でも「お面」を中心とした出展を行ったのですが、3日間の開催期間で来場者人気投票の1位を頂く日もあるなど大きな手ごたえを感じています。
県外に出て気づいたのは、福島県はデコ屋敷だけではなく白河だるまや会津の起き上がり小法師など張子文化が広く伝わっています。実は他県ではここまで広く張子文化が広がっている地域は少ないようで、展示会を通して郡山だけにとどまらず、福島県の文化として発信できればと考えています。

デコ屋敷本家大黒屋
住所 〒963-0902 郡山市西田町高柴舘野163
TEL 024-971-3176
FAX 024-971-3176
掲載ページ https://koriyama-monodukuri.jp/
companydetail.php?cd=136