認定特定非営利活動法人キャリア・デザイナーズ

2022.12.12

ニートやひきこもりの方の社会参加・就労自立支援を行う団体、認定特定非営利活動法人キャリア・デザイナーズ。
2008年の設立以来、10代後半から50代までの幅広い年齢層の方のサポートを続ける同団体では、農福連携を中心とした企業間連携を積極的に行っています。現在、理事長として団体を率いる鈴木隆将さんにお話を伺ったこの日も、まさに農福連携の最中。寒空の下、熱心にカブの収穫作業に取り組む利用者の姿は、とても生き生きと輝いていました。

──設立の経緯、活動内容をお教えください。

キャリア・デザイナーズは2008年に設立した団体です。当法人を設立した前理事長(現会長)は定年退職後、ハローワークで若年者就職相談員として多くの若者の就職に携わりました。その頃はリーマン・ショックが起こり、「ニート」といった言葉が世に広がり始めるなど就職に関しては厳しい時期でした。若者との就職相談を重ねるうちに、単に会社を紹介するだけではなく、就職することに難しさを感じる若者たちが、心を休めながら自立に向けた訓練ができるような場を作りたいと考えて当法人を設立しました。活動の内容としては就労体験・ジョブトレーニングを行っています。当法人の利用者と職員が一緒に(ご依頼をいただいた)企業様や現場へ伺い、軽作業等をお手伝いしながら就労に必要な体力をつけたり、コミュニケーションを学ぶ活動です。そのほか、初めの一歩として当法人事務所内での軽作業ワークも行っています。また、パソコンの操作やビジネスマナー、コミュニケーションを学ぶといった就労準備の講座を行っています。他にも、季節ごとに花見会やバーベキュー等の交流会を行いながら、他人と一緒に過ごすことに慣れたり、協力して物事を進めることの大切さを学んだりするような活動もしています。

──今もまさに軽作業のお手伝いをされていますね。こちらはどのような企業間連携なのでしょうか?

農業者の株式会社まどか菜園様には農福連携事業で日頃よりご協力いただいています。まどか菜園様では秋冬にカブや人参を栽培・収穫されていますので、そのお手伝いをさせていただいています。今はカブの収穫作業中ですね。

──収穫作業をされている方は利用者様ということですが、利用者様はどのように貴団体へ
参加(登録)するのでしょうか?

郡山市から相談業務を受託しておりまして、例えば他者とのコミュニケーションに不安がある、生活リズムが乱れている、仕事がなかなか続かない、あるいは、体力が不足していて就職する自信が無いなど、お悩みや不安を抱えている方が当法人へ相談に来られます。また、他の支援機関や医療機関からの紹介で来られる方もいらっしゃいます。相談者の方のお悩みや不安を踏まえて、それぞれに適した就労体験等の活動をチーム(利用者と職員)で行っていただくという形です。チームで他の参加者と一緒に様々な活動に参加しながら、自己の課題解決、例えば、他者とのコミュニケーションに慣れ、体力や生活リズムの改善などできるようにしています。

──本日のような連携以外では、どのような連携をされているのですか?

アパートの共用部の定期清掃、安積歴史博物館やコワーキングスペースの館内清掃の活動も行っています。フリーマガジンの封入れ作業といった活動もあります。地元企業で構成される福島県中小企業家同友会にも加盟し、セミナー共催のほか、加盟されている地元企業様に就労体験や雇用の受入れの際にご協力をしていただいております。現在、スポットでの連携のほか、定期的に連携している企業様は10社ほどになります。最近ですと、三菱商事復興支援財団様、ふくしま逢瀬ワイナリー様、農業者の方々と連携して、ワイン用ブドウの農作業に、準備作業から収穫、片付けまで半年間参加させていただきました。また、企業だけでなく、地域の高齢者のお宅にお邪魔して草むしり等のお手伝いをさせていただくこともありますね。この取り組みは、民間財団による社会貢献事業への助成を受けてスタートしました。2年目は、郡山市の協働政策提案制度により市内3箇所の町内会と連携してトライアルとして事業を実施しました。その後、自主事業として、依頼先のご家庭のご協力やご寄附などの支援を受けながら行い、現在7年目となりました。現在も継続して1か所の町内会と連携して行っています。また、これまでのご依頼者でリピーターになってくださるお宅もあります。ご依頼先のご家庭の方からも感謝されて参加者がとても大きなやりがいを実感できる活動のひとつになりました。

当法人が参加している『農福連携』には2つの側面があります。1つは先ほど申し上げたような活動(就労体験やジョブトレーニング)として当法人の利用者が参加するものです。もう1つが郡山市の「農福連携推進モデル発展事業」を受託し、コーディネート業務として当法人が農業者様と福祉事業所様の間に入って作業の調整を行うというものです。東京の団体の公益社団法人日本フィランソロピー協会様が4年前に郡山市の農福連携事業を受託実施するにあたり、地元の団体として当法人へお声がけくださり、お手伝いを始めたのがきっかけでスタートした事業になります。農業者や福祉事業所だけでなく、当法人のボランティアで農作業に興味のある方を中心に結成された、市民グループ「サイ活倶楽部」の皆さんにも協力してもらいながら展開しています。

──ほとんどの事業が連携によって行われているということなのですね。
連携によって得られたメリット、デメリットをお教えください。

メリットは、地域の方々との様々なつながりが広がるということです。自分たちの世界だけではない、いわば「異文化」とも言えるような世界とつながることができることで、新しい経験や発想が得られるのは嬉しいですね。例えば農業という世界とつながったことで、農作物の栽培・収穫に携わることができました。これは利用者が就労体験をする上で、とても大きなやりがいになっているようです。団体としては、自分たち以外のいろいろな世界とつながることができる。当法人の利用者は、そのつながりを活用して、いろいろな人と一緒に作業ができるから、地域や社会とのつながりを実感できる。活動を通じて社会参加のきっかけになりますし、自信や自己肯定感も持てる。そういった「つながり」の部分は非常に大きなメリットですね。

デメリット、というか難しい点は、メリットの裏返しで、違う世界の方々とお仕事をする以上、当然のことながら、それぞれの考え方や価値観があります。お互いを理解するための場や時間が必要なことですね。目標を共有していく過程が大事になります。農福連携事業では、お互いの理解を深め、ミスマッチを可能な限り防ぐために、年に3回ほど農業者様と福祉事業所様とで意見交換会を開いています。この会のおかげでいろいろ腹を割ってお互い話せるので、農福連携としては上手く機能しているのではないでしょうか。

──これから連携を考えられている企業・団体へアドバイスはありますか?

何かいきなり大きなことをやるというよりは、お試しとして小さなスケール感で始めるのがいいのではないでしょうか。最初は小さなことから始めて、お互いざっくばらんに雑談等ができるような関係を構築していくと、いろいろなアイディアが出て、やがて大きな連携になるのではないか、と思います。

──これからの目標をお教えください。

就労体験やトレーニングの場を広げるために、今後、デスクワークやネット関係、例えば、WEBページのコーディング業務など作業を分解し、地元企業様と連携して行うことはできないか現在検討しているところです。
農福連携に関して言えば、農福連携で作った農作物を販売したり、その農作物を使った商品開発をして六次化をしたりするのもおもしろいと考えています。妄想も含まれていますが、就労のためのトレーニングの場として、より主体的に農業に関わったり、農福連携による農作物を使ったメニューを提供するカフェなどを自前で運営するようなこともできたらいいなと思っています。また、最近、一緒に活動している農業者様や福祉事業所の方との雑談で盛り上がったのは、連携している農業者様で作られている春菊、シイタケ、ネギ、また、福祉事業所様で自ら栽培されている農作物と、まどか菜園様の人参・カブと合わせれば「郡山農福鍋セット」も作れるかも、それを販売するのもおもしろいかもなんていう話もでたりしました(笑)。まだ雑談レベルですが、そういった取り組みもひとつの連携ですよね。また、地域の農業者や福祉事業所が参加して郡山市の農福連携協議会の設立・運営も始まったところです。その輪も少しずつ広げていければよいですね。

NPO法人キャリア・デザイナーズ
住所 〒963-8822 福島県郡山市昭和2-2-7 さとうビル2F
TEL 024-973-5667
FAX 024-973-6116
掲載ページ https://koriyama-monodukuri.jp/
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