株式会社さくら農園

須賀川市を拠点に、水耕栽培業と観光農園業を営む「株式会社さくら農園」。水耕栽培、観光農園ともに未経験でスタートし、ノウハウを蓄積させながら規模を拡大してきました。現在、観光農園業は「ストロベリーパラダイス」という屋号となり、様々な種類のいちごを楽しめる農園に成長しています。また、水耕栽培は観光農園の2倍の規模で運営しているのだとか。今回は、水耕栽培と観光農園という2つの軸で農業を実践する株式会社さくら農園の代表取締役、佐藤敦さんにお話を伺いました。

――貴社の主な事業について、お教えください。

当社では、水耕栽培と観光農園を軸に農業を営んでいます。
主力品目は、水耕栽培で育てた小ネギ、年末のみ注文生産するみつ葉です。
また、いちごやメロン、トマトやぶどうも栽培・販売しており、現在は17品目のいちごが食べ放題となるいちご狩りをご提供しています。

私が20代の頃、父親が経営していた切り花農家を継ぐ形で東京から須賀川市へUターンしました。しかし当時は、バブルが崩壊して切り花の需要が無くなってしまった時期で、切り花からの転換をしなければならない時期だったんです。
現在の主力となっている水耕栽培が日本で広まり始めたのが、ちょうどその時期でした。個人的な興味も手伝って、県内に水耕栽培をしている業者がほぼ居ない中、手探りの状態で水耕栽培をスタートしました。最初は上手くいかないことも多かったのですが、徐々にノウハウを習得し、現在に至ります。

しかし、取り扱うのは農作物ということで、冬場は日照不足や温度不足の影響でどうしても収量が落ちてしまいます。
そんな冬場に何か出来ることは無いかと探した結果、一般的に冬場に旬を迎えるいちごを導入することにしました。例え水耕栽培を元々やっていたとしてもいちごは全く別物で、お客様に食べていただけるようなクオリティにするために約4年の試験期間を費やしました。その4年間で、駐車場や施設の整備を行い、行政からの許可を取り付けて、ようやく5年目のオープンにこぎつけた形ですね。

現在は、水耕栽培は観光農園の2倍の規模で行っており、観光農園は「ストロベリーパラダイス」という屋号で運営して多くのお客様にお楽しみいただける農園となりました。

――現在、取り組まれている連携についてお教えください。

「福島県ハイテクプラザ 会津若松技術支援センター」との連携で、生のいちごを絞ったノンアルいちごワイン「StrawBerry100」という製品を開発しました。

いちごの品目が多く、たくさんのいちごを楽しんでいただける農園として成長してきましたが、さらに品揃えを増やしたいと考えたことが開発のきっかけです。
そのまま食べる生食の他にいちごを楽しめる手段が、加工品。中でも許可の関係で清涼飲料水に焦点を当てました。
多くの品目を取り扱っている関係上、中には流通に向かないいちごも存在します。そういったいちごを絞ったドリンクを開発したいと考えたのですが、普通の作り方では差別化が図れません。そこで、ハイテクプラザ様にドリンクを特殊な製法で作りたいとご相談したところ、ワインのようにいちごを絞って一滴一滴注入する製法を教えていただきました。

普通に絞るだけだと、歩留まり率(投入したいちごから絞れる製品の割合)が低くなってしまい、結果的には投入したいちごの半分以上がロスになってしまいます。10のいちごから、3の製品しか絞れないんです。ハイテクプラザ様にご相談したのは、製法の他に、この歩留まり率を上げるためにどうすれば良いのかという技術部分でした。

そうしてハイテクプラザ様と連携して試行錯誤を重ねた結果、10のいちごから7の製品が絞れるようになり「StrawBerry100」として製品化に成功しました。
製品化に成功した「StrawBerry100」は、500mlの瓶3本で1セットで販売しています。3本はそれぞれが品目の異なるいちごを絞った製品なのですが、本来は「いちご・ぶどう・メロン」の3種類を1セットにしたいと考えていたんです。いちごとぶどうは歩留まり率を上げた形で製品化に成功しているのですが、メロンのみ販売・保存の関係で製品化の実現が難しい状況でして。現在は、メロンの製品化に関して色々とご相談しています。

「StrawBerry100」の開発を支援した「福島県ハイテクプラザ会津若松技術支援センター醸造・食品科(県産品加工支援センター食品加工支援チーム)」の馬淵さんにもお話を伺いました。

――支援のきっかけと支援内容について教えてください。

はじめに「いちご100%のジュースを作りたい」とのご相談を頂きましたが、佐藤社長が仰るとおり課題は「歩留まり」でした。これを改善するために特別な酵素を用いて最適な温度で加工することで果肉を溶かし、歩留まりを向上させることに成功しました。酵素自体は製品に残らないため素材そのものの味を楽しむことができます。

ただし、たとえ歩留まりが向上したとしてもお客様が高額な製造設備を揃えないといけないとなると製品化のハードルが高くなってしまいます。私たちは製品の安全性を確保したうえで、お客様自身が可能なかぎり導入しやすい形で製造できるよう、工程の工夫とサポートを行っています。

当センターでは2024年度は1月までで157件の相談受付・支援をさせていただきました。県の施設として、まだまだこういった支援を行っていることが広まっていないと思いますので、是非県産品を用いた6次化商品の開発にお困りの方は、各分野の専門家が親身にサポートいたしますので遠慮なくご相談頂きたいです。

――連携で開発された「StrawBerry100」の今後の展望は?

日本のいちごは甘くて美味しいことをアピールできるので、海外の方もターゲットに販売したいと考えています。

また、ふるさと納税の商品としてご提供もしていきたいですね。
須賀川市が提携している『ウルトラマン』の瓶にStrawBerry100を入れ、ふるさと納税の商品としてご提供することになりました。早ければ、2025年中に須賀川市のふるさと納税返礼品としてご提供できる予定です。

――連携事業を行ってみて、良かったことは何ですか?

やはり一度お仕事をご一緒させていただくことで、新たな人脈が出来ることですね。他の事業を行う際にも、またご相談しやすい関係性が築けることが良いことだと思います。

――今後、新たに行いたい連携はありますか?

福島県内にあるいちご農園と連携して、県内のいちご農園を巡っていただけるような、ツアーやスタンプラリーなどが実現できると面白いと思います。
お客様を取り合うのではなく、協力していかに首都圏から福島県へ人を呼び込めるかが大事だと思うので、他のいちご農園との連携は有意義なのではないでしょうか。

株式会社さくら農園
住所 〒962-0051 福島県須賀川市越久字杉坦318番地1
E-Mail spwu7cx9@eagle.ocn.ne.jp
掲載ページ https://strawberry-paradise.com/