日ノ出工機株式会社

田村町に所在する日ノ出工機株式会社は、精密部品加工を得意とするものづくり企業です。創業75年の伝統と信頼のあるものづくり企業として、鉄道や医療、自動車や半導体など、様々な分野の精密部品を手掛ける一方で、近年では複数の連携事業にも参入しているのだそう。今回は、日ノ出工機株式会社の代表取締役社長である渡辺拓美さんに、複数の連携事業に関するお話を伺いました。

――日ノ出工機という会社について、お教えください。

当社は2026年となる今年で創業76年を迎える企業です。材料となる金属の丸い棒を削り出しで製品を作る「切削加工」をメインに行っています。建設機械の油圧部品、原発や水素プラントに使われるバルブ、鉄道部品、自動車部品や半導体など、様々な分野・業界に向けて精密部品を納品させていただいている会社です。
近年は、これまで培ってきたものづくりの経験を活かす形で自社製品(アクセサリーや櫛など)の製造に取り組んでいます。

――現在、取り組まれている連携についてお教えください。

当社では主に3点の連携事業を行っています。まず1つ目は、エゴマの自動選別機である「福箕(ふくみ)」の製造・販売。2つ目が「オープンファクトリー」という連携事業の実施。3つ目は廃材を利用した灯りの「宵蛍-yoibotaru-」の製造・販売です。

――エゴマの自動選別機に関する連携についてお教えください。

2020年頃に「エゴマの自動選別機の『量産』に困っている」というお話を郡山市産業創出課の方からお聞きしたのが始まりでした。ご相談の内容は、日和田にある福島県農業総合センターですでに機械のベースを作っているものの、それを量産できずにいるというものです。
聞けば、エゴマは収穫してから出荷するまでに何度か選別の工程があるのですが、最終選別の作業が途方もなく大変な作業らしいのです。例えば4人がかりで選別を1時間行っても、1キロほどしか選別できず、その作業がボトルネックとなり、エゴマ製品の製造に時間がかかってしまうようでした。

大変そうな様子を目の当たりにして、これは何とかしなければと感じ、機械の一部を改良・コンパクトにし、量産化に成功。この機械は「福島県から生まれた唐箕機(とうみき)」という意味を込めて、「福箕(ふくみ)」と名付けました。

実際に使っていただいている農家さんにお話を伺うと、無人で1時間あたり10キロほどのエゴマを選別することができるようになったそうで、4人で1キロだった作業から大きく効率が上がったようで、手応えを感じましたね。

この連携は、福島県農業総合センター・発明協会・テクノポリスといった機関の方々と当社が連携して実施したものですので、産官連携によって実現したコラボレーションと言えるのではないでしょうか。

――続いて「オープンファクトリー」事業の連携についてお教えください。

「オープンファクトリー」は、郡山テックブートキャンプというプログラムに参加したことがきっかけで発案した事業です。
テックブートキャンプは、デザイナーさんにアドバイスをいただきながら、自分で製品の図面を書き、デザイン志向で工業製品を作るという取り組みでした。

私も製品(櫛)の図面を書き、工場の職人さんに図面を持っていったところ、楽しみながら製造に取り組んでいただけたんです。それまでは、正直に言うと工場に対するイメージがよくありませんでした。毎日同じ物を作り続けているゆえに、つまらなさそうなイメージがあったんです。しかし、それは間違いで、工場の職人は誇りを持って仕事をしていて、誰かの希望を形にする強い力を持っているんだと気づきました。

それがきっかけとなり、工場の素晴らしさ・格好よさを世に広めたいと考えるようになり、オープンファクトリーという事業が誕生しました。新潟県の燕三条のオープンファクトリーを参考に、郡山市バージョンのオープンファクトリーとして構想を練り、実現した形です。
当事業は、2022年10月の第一回開催以来、3年以上に渡って続いています。
子どもたちのものづくり体験、工場を居酒屋と見立てて行うイベントの開催、ワークショップやトークセッションを通じて、ものづくりの楽しさや格好よさを世に広めようと奮闘中です。

このオープンファクトリーでは、郡山市内のものづくり企業の皆さん、郡山市のご担当者様、学生の皆さんとの産学官連携を実現しています。

――「宵蛍-yoibotaru-」という製品及びその連携についてお教えください。

当社の工場から出る金属の廃材と、伝統和紙・木工技術・レーザー彫刻技術・ガラス加工技術・組み立て技術をかけ合わせたアップサイクルランプシェードです。

自社製品として製造している金属のネックレスを作る際、金属板からネックレスのパーツを切り抜くのですが、どうしても金属板からパーツ部分を切り抜いた後の板は廃材になってしまいます。当社の従業員がそれを見て「もったいないからランプにしてみるとよいのでは?」という話をしていました。それを聞いて、確かに面白いかもしれないと感じ、思い切って製造してみることにしました。

せっかく作るのだから、全部を郡山市産のもので固めたいと思い、ランプシェードの各パーツに郡山市産のものを使用することにしました。

ランプをカバーする和紙は中田町の伝統文化である「海老根伝統手漉和紙」という伝統和紙を使用。郡山地区の木工工業団地協同組合様よりご提供いただいた杉の木を、湖南町にあるステップ・エンジニアリング様のレーザー彫刻技術で加工していただいた木工パーツも使用しています。富久山町にある岩崎ガラス工芸社様に加工いただいたガラス板も使用し、最後はあぶくま支援学校の生徒様にそれらのパーツを組み立てていただき、当製品は完成します。

当社の廃材を活用したいという想いに、郡山市内のものづくり企業の皆さんや学生さんが応えてくださった形で実現した連携ですね。

この「宵蛍-yoibotaru-」は、現在ECサイトで販売しているほか、アジア圏の国々に展開できないかと模索中です。

――各種の連携事業を行ってみて、良かったことは何ですか?

一社では叶えられないことが叶えられることですね。
本業にしても、本業外にしても、当社だけではできることが限られてきます。しかし、他業種の方や地域の方々と連携することで、当社では実現できないことが実現可能になるんです。自分たちの視点ではない他社の視点から物事を見ることで、作ろうと思っていたものをブラッシュアップできるし、よりユーザーに寄り添った製品になるのではないでしょうか。点と点、線と線ではなく、もっと広い視点を持って面でつながれるような、そういった連携を今後も意識したいですね。

――今後、連携事業を考えている方々へアドバイスはありますか?

結局は、やるか、やらないかという話になるので、常に「やる」という選択を取り続けることは大切だなと感じます。

また、連携をすることを決めて、いざ立ち上がると色々な意見がぶつかり合うと思いますが、その時に自分の中で決めた軸(コンセプト)がブレないようにすることが重要です。
自分がしたいこと、成し遂げたいことは心の中で軸として持っておいて、それがブレないように前に進み続けることで、連携事業が成功しやすくなるのではないでしょうか。

協力していただける方々を尊重しながら、連携ならではの発想を絡め、どんどん新しい事業を生み出していければ面白いですね。

日ノ出工機株式会社
住所 〒963-0725 郡山市田村町金屋字新家16
掲載ページ https://koriyama-monodukuri.jp/companydetail.php?cd=024
https://www.hinode-k.co.jp/
https://www.instagram.com/hinode_ko_ki/