あさか野窯

郡山市中野に所在するあさか野窯は、郡山市の陶土を使用した独自の焼き物「あさか野焼」を製作・販売している窯元です。東日本大震災を機に浪江町から郡山市へ移った大堀相馬焼職人の志賀喜宏さんが、2014年に開業しました。
「焼き物」は、一般的には職人が一人で作り上げる陶器であり、形も色合いも様々。あさか野窯では、そんな芸術性の高いジャンルである焼き物を、どのような形で連携させているのでしょうか。
今回は、あさか野窯の店主であり、大堀相馬焼及びあさか野焼職人の志賀喜宏さんにお話を伺いました。

――まず始めに、あさか野窯という窯元についてお教えください。

元々、私は浪江町で大堀相馬焼の窯元として作陶していました。西暦1700年頃から300年以上続く大堀相馬焼の窯元で、私が16代目です。大堀相馬焼は、創始者が7人の弟子に技術を伝え、その7人の弟子が15人の弟子に技術を伝えたという歴史があります。その最後に技術を受け継いだ15人、「15人衆」と呼ばれた職人の中の一人が、私の祖先にあたります。
そんな歴史の深い当窯元なのですが、東日本大震災で避難を余儀なくされました。避難生活の始まりは本宮市で、その後に郡山市へ転居。元々いた浪江町が帰還困難区域に指定されたことで、郡山市に腰を落ち着けて本格的に窯元として活動するために、2014年にあさか野窯を開業しました。

あさか野窯では「あさか野焼」という陶器を製作・販売していて、その他に陶芸教室も開催しています。「あさか野焼」は、郡山市の陶土を使って作陶しています。郡山市の陶土というのは、元々は屋根の瓦の原材料として使用されていた土ですので、この土で作られた陶器は焦げた茶色が特徴的ですね。

――現在、取り組まれている連携についてお教えください。

現在、取り組んでいるのは磐梯熱海温泉の旅館グループである栄楽館グループの皆様と連携して5月に実施する「ガストロノミーツーリズム」です。ガストロノミーというのは、食に関する文化や知識などを探求する学問のことで、その学問とツーリズム(観光)をかけ合わせた造語です。
栄楽館グループ様で実施される当ツアーで、あさか野窯はホテル華の湯様と連携し、器づくりから始まる食の体験をご提供する予定です。
具体的には、あさか野窯で郡山市の陶土を使用した作陶の体験をしていただき、郡山市の特産を味わう「器」を作っていただきます。その後は、華の湯様にて郡山市の食材を使った料理を、あさか野焼の陶器を器に召し上がっていただくというコースです。
このツアーで連携させていただくことになったきっかけは、ご縁があってホテル華の湯様で使用される特別な食器を当窯元で作陶したことです。それがきっかけで、栄楽館グループ様にガストロノミーツーリズムのお話をいただき、連携することになりました。
食文化と、それを支える食器(陶器)を共に味わえる有意義なツアーですよね。

また、2018年頃から、会津漆器である会津塗や会津木綿といった、焼き物以外の伝統工芸品と連携(コラボレーション)した製品の開発を始めています。私は元々、異素材同士を組み合わせて新しい価値観を創造してみたいと考えていたので、知り合いの職人さんにお声がけをして連携をスタートさせました。

会津漆器(会津塗)の職人さんと連携して開発した器は、漆器職人と陶器職人の技術を融合させ、異素材同士の組み合わせを楽しめるカップです。
会津木綿の工場を保有されている株式会社はらっぱ様との連携で開発した「会津木綿巾着袋入ぐい呑」は、会津木綿の巾着袋にあさか野窯のぐい呑みが入っているセット商品です。

その他の連携ですと、日本貿易振興機構(ジェトロ)との連携で海外の販路開拓をしたり、福島県との連携でポケモンのラッキーをテーマにした「ラッキーのすず鳴りカップ」を製作したり、窯元としては珍しく官民連携も積極的に行っています。

――事業連携の際に意識されていることは何ですか?

私はデザイン性と機能性がバランスよく混ざり合っている陶器を作りたいし、そういう陶器が面白いと考えています。機能性ばかりを追求したものでもダメだし、デザイン性を追求しすぎて使いづらくなってもいけない。その間にある丁度よいバランスを連携先の職人と一緒に探し出す、ということは強く意識しています。

――連携事業を行ってみて、良かったことは何ですか?

例えば、連携先のホテルで当窯元の陶器を使ってお食事をいただいた後に実際にお買い上げいただくようなケースもありますので、売上に直接つながってくるというのは大きいですね。
また、私自身は焼き物しか知りませんので、漆器や木綿など、異素材を使っている異業種の方々と交流ができるのも面白いし刺激になります。知り合ったら毎回何か連携につながる訳ではないけれど、何か新しいことを一緒にできるきっかけになるかもしれませんしね。

――現在行われている連携の目標をお聞かせください。

新たな異業種の事業者様と連携して、新しい価値を創造したいですね。
今の時代、ありふれた陶器ではなかなか売れませんし、人の興味も惹きつけられません。あさか野窯の焼き物と組み合わせることで、これまでになかったアイデアを実現できるような、そういう連携がしてみたいです。チャンスだと思ったらすぐに自分から声をかけて、積極的にチャレンジしていきたいですね。

――今後、連携事業を考えている方々へアドバイスはありますか?

アドバイスというほどのものではありませんが、製造業に関して言えば「アイデアを実現できるだけの技術をきちんと保有すること」は大事だと思います。
せっかくいいアイデアがあっても、それを実現させるだけの技術がなければ意味がありません。頭の中で想像したものを具現化できる力を身につけられるよう、普段から研鑽を怠らないことが大切なのではないでしょうか。

あさか野窯
住所 〒963-0206 郡山市中野1丁目12
掲載ページ https://koriyama-monodukuri.jp/companydetail.php?cd=153
https://www.asakano.net/